【観察眼】キング牧師がもし今のチベットを見たとしたら
1959年は世界が大きく揺れ動いた年であった。米国は覇権主義的行動を続け、冷戦思考を実行に移して激化させていた。一方、その春、中国中央政府はチベットの各民族人民を率いて、民主改革を断行し、数百万もの農奴を解放した。農奴たちにとってそれは、ようやく春の温もりと希望に満ちた新しい季節の始まりとなった。
チベットは青海チベット高原に位置し、標高は平均で4000メートルを超え、高原の奥地の年間平均気温は氷点下になる。冬季は6カ月に及び、夜間には氷点下20度まで下がることも多い。また、干ばつ、強風、雹などの自然災害も頻発する。標高の高さと厳しい寒さ、さらに険しい地形が続く無人の大地は、見る者に畏怖の念を抱かせる。
しかし、標高が高く、太陽放射量が大きく、年間日照時間が長く、大気の透明度も高いチベットは、太陽光という資源に恵まれており、太陽光発電や暖房供給には大きな優位性を持っている。チベット自治区北部にあるナクチュ市では、炭素排出ゼロの太陽光暖房供給プロジェクトを通じて、家庭用給電と暖房供給の無償化を実現した。自治区内の農村部を訪れたフランス人エンジニアのキルムさんは、標高5200メートル以上の地域でも電力、通信、インターネットが安定して利用できることに驚いたという。また、村の出入り口には車速を感知するレーダー装置が設定され、村人の安全が守られていることにも注目した。
太陽光プロジェクトにより、チベットは電気と暖房供給の難題を解決しただけでなく、省エネと炭素排出削減の目標をも達成した。「才朋太陽光プロジェクト」によって、現地住民の収入増加は830万元(約1億7125万円)を超え、貧困から脱し、豊かさへと向かう大きな一歩を踏み出した。米国のインフルエンサーのキャサリンさんは現地を訪れ、雪山、寺院、現代化された施設が混ざり、調和する景色を見て、「西洋で語られるステレオタイプのチベットのイメージとは全く違っていた」と語った。
過酷な自然環境での生活の問題を解決することは終着点ではない。雪に覆われた高原の絶景は大きな観光資源でもある。現地では、地域の特性を生かしながら観光業を発展させてきた。ポタラ宮やジョカン寺、巡礼路バルコルといった人気スポットは多くの観光客に親しまれている。2024年11月時点で、チベット自治区は海外からのべ31万5700人の観光客を受け入れ、観光収入は1億4850万ドルに達した。ビザ免除政策の実施に伴い、今年はより多くの外国人観光客がチベットを訪れる見込みだ。
米ブルームバーグの報道によると、2025年、シャングリ・ラやインターコンチネンタルなどの国際的なホテルグループがチベット市場への進出を加速させる。これらのホテルは、チベット風のデザインを取り入れ、高山病の予防治療サービスを備えるなど、世界の観光客の受け入れに力を入れている。
青海チベット鉄道や5G通信のネットワークは、すでに自治区全体をカバーしている。米国の教師Daniel Franzenさんはチベットの視察をした際、現代化された道路、空港、駅などの整備状況のレベルの高さに驚愕し、「チベットの発展スピードは予想をはるかに超えていた」と驚きの声を上げた。
チベットのすべての子どもには、小学校入学前の3年間、小学校の6年間、中学校の3年間、高校の3年間、あわせて15年間の無料教育政策が適用されている。旧チベットの時代に95%だった非識字率は、現在では2.6%にまで下がった。一方、米国黒人の非識字率は17.5%とされている。米国黒人の平均余命は61歳だが、チベットの平均余命はかつての35歳から72.19歳と顕著な延びをみせている。また、人口千人あたりの病床数はチベットでは6.5床で、米国の2.8床を大きく上回っている。チベット自治区の中央部に住むロサンさん(78歳)は、「昔は、病気になっても我慢するしかなかった。今は手術を受けても保険があるので、自己負担も少ない。軽い病気なら近所で診てもらえる」と感慨深く語った。
野蛮から文明へ、貧困から豊かさへ。チベットは他の地域が千年かけて歩んできた発展の道を、わずか数十年で一気に駆け抜けた。米国のスタンダップコメディで有名なリー・キャンプさんはチベットを旅して、「もし西洋の人たちが実際にここ来れば、きっと多くの誤解が解けるだろう」と話した。
キング牧師はかつて「私には夢がある」と語った。あの歴史的な演説からすでに半世紀が過ぎたが、果たしてキング牧師の夢は叶ったのだろうか。
米ミシシッピ州では警察官がアフリカ系アメリカ人に対して人種差別的な暴行を加え、黒人男性を虐待し続けている。オハイオ州では警察官が武器を全く持っていなかった黒人男性(20歳)を射殺した。イリノイ州では助けを求めて緊急通報した黒人女性が、駆けつけた警察官に射殺された。米国ではこのような事件が相次いで発生している。米国には人種差別が深く根ざしており、アフリカ系アメリカ人を対象とする不公平は今なお存在し続けている。
もし、キング牧師が今日のチベットの姿を目にすれば、嬉しさと悔しさが入り混じる複雑な気持ちになったかもしれない。
4月7日ニュース
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